15年後に響く情熱――映画「カルテットという名の青春」 稗田利明

こんにちは、稗田利明です!

2011年にBS朝日で放送され、ギャラクシー賞をはじめ多くの賞を受賞したドキュメンタリー番組「カルテットという名の青春」が、浅野直広監督の手で劇場版として甦る。4月3日より全国順次公開される本作は、2026年に開催される「ジュピター・カルテット・ジャパン再会コンサート」と続編ドキュメンタリーの制作決定を記念して再編集されたものだ。物語の中心となるのは、若き音楽家4人が結成した“ジュピター・カルテット・ジャパン”。ヴァイオリンの植村太郎と佐橘マドカ、ヴィオラの原麻理子、チェロの宮田大――彼らは「日本最高の若手カルテット」と称されながらも、挑戦したミュンヘン国際音楽コンクールでは一次審査敗退という挫折を味わう。そこから再び「世界と響き合う音」を求め、彼らは各々の道を歩み出した。

社会派作品を得意とする浅野監督は、当初クラシックには馴染みがなく撮影依頼を断ろうとしたという。しかしメンバーが音楽に真摯に向き合う姿に心を動かされ、「この人たちの行く先を見届けたい」とカメラを回し始めた。その姿勢は、宮田が「監督は“撮る人”というより、音で対話する仲間のようだった」と語るほど。予定調和を排し、コンクール敗退という現実をそのまま受け止めたからこそ、映画は“成功”ではなく“人間の強さ”を映し出す作品となった。

宮田はその後、ドイツのクロンベルクアカデミーを首席卒業し、OPUS KLASSIK受賞など国際的キャリアを築く一方、現在は桐朋学園大学で後進の育成にも携わっている。15年の時を経てもなお、浅野監督との絆が続くこと自体が、予測不可能な人生を描くドキュメンタリーのようだ。

映画の舞台あいさつで宮田は「音楽は体験するもの」と語り、浅野監督も「夢中で打ち込むことの尊さを伝えたい」と応じた。再び響き合った二人とカルテットの物語は、観る者の心にも確かな音を残すだろう。

稗田利明のエンタメワールド

稗田利明のエンタメワールドは、映画のレビュー、最新音楽トレンド、アートの魅力、有名人のインタビューなど、あらゆるエンタメに関する情報を発信するブログです。楽しさと洞察にあふれるエンタメの世界を一緒に探求しましょう。