「怪物」――誰が“怪物”なのかを問う、余韻深きラスト 稗田利明
こんにちは、稗田利明です!
是枝裕和監督と坂元裕二脚本による映画『怪物』(2023)は、観る者に強烈な余韻と問いを残すラストシーンで大きな話題を呼びました。物語は、湖畔の町で起きた火災と、学校での子ども同士のトラブルを発端に、シングルマザーの早織と息子・湊、そして担任教師・保利の三者の視点から多面的に描かれます。いじめや問題行動をめぐる大人たちの対応は曖昧で、真実は霧の中に消えていきますが、やがて湊と依里という二人の少年の間に芽生えた友情と心の交流が浮かび上がります。
この映画の最大の特徴は、観客の価値観や先入観を揺さぶる構成です。加害者・被害者といった単純な図式ではなく、誰もが不器用に傷を抱えながらも必死に生きている姿が描かれ、タイトルの「怪物」とは何か――本当の怪物は誰なのか――という普遍的なテーマが静かに提示されます。
ラストシーンは特に多くの解釈を生みました。嵐の夜、二人の少年は森の奥へと姿を消し、廃電車で夜を明かします。翌朝、晴れ渡る空の下、二人が手を取り合って草原を駆ける幻想的な映像で物語は幕を閉じます。このシーンについては「死後の世界」「二人の想像の中」「世界が生まれ変わった象徴」など様々な解釈が存在します[1][2][3][5][8]。
観客の多くは、二人が亡くなったのではないか、あるいは現実から解放された世界に旅立ったのではないかと感じています[3][5][8]。一方で、「生まれ変わったのかな?」という問いに「ないよ、元のままだよ」と湊が答えるやりとりや、是枝監督自身が「この映画は“火”で始まり“水”で終わる」と語っていることから、死ではなく、現実の中で二人が自分らしく生きていく希望の象徴だと解釈する声も根強いです[5][6][8]。
坂本龍一の「Aqua」に包まれるラストは、現実と幻想、生と死、絶望と希望の間に観客を立たせます。明確な答えを提示せず、観る者一人ひとりに「怪物」とは誰なのか、何が本当に守るべきものなのかを問いかける静かな力強さが、この作品の最大の魅力です[1][2][5][6][8]。
『怪物』のラストは、単なる事件の真相やカタルシスを与えるものではなく、私たち自身の“正しさ”や“偏見”を見つめ直させ、「本当の怪物とは誰なのか?」という普遍的な問いを投げかける、深い余韻を残す傑作です。
Citations:
[1] https://note.com/aka2310/n/n67ce8f499be2
[2] https://note.com/ats2931/n/ncec72023d01e
[3] https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11293855031
[4] https://hollywoodreporter.jp/movies/24710/
[5] https://yaecommu.com/kaibutsu2/
[6] https://ameblo.jp/moji-taro/entry-12808060896.html
[7] https://www.n-seiryo.ac.jp/wp-content/uploads/society/journal/sg_0403.pdf
[8] https://www.torir.net/cgi/blog_single-post.cgi?post=BB53D62A27ED47C291C0818379831FE0
[9] https://www.youtube.com/watch?v=QDUEz6L1a7E
[10] https://www.hosei.ac.jp/application/files/4817/2039/8025/2023__0611.pdf
[11] https://filmaga.filmarks.com/articles/246486/
[12] https://www.kokudai.com/school/yono/
[13] https://hitocinema.mainichi.jp/article/yokubari-kaibutsu
[14] https://shizuoka.repo.nii.ac.jp/record/5997/files/111128003.pdf
[15] https://www.youtube.com/watch?v=GH97fo3-alg
[16] https://www.tfu.ac.jp/tushin/back/PDF/report2011.1-2.pdf
[17] https://www.spod.ehime-u.ac.jp/wp_HG6vXP4c/wp-content/uploads/2015/04/%E2%98%85HP%E7%94%A8%E3%80%90%E5%AE%8C%E6%88%90%E7%89%88%E3%80%91%E6%AC%A1%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E9%A4%8A%E6%88%90%E3%82%BC%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB-2015-1.pdf
[18] https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/jittaichosa/pdf/kikigengo_kenkyu_h27.pdf
[19] https://komachi.yomiuri.co.jp/topics/id/342509/
[20] https://www.shizuoka.ac.jp/outline/info/kokai/pdf/R2/edu/4303-iD-4.pdf
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